レンタル彼氏–恋策–
「じゃ、二人で行きますか!」
杏奈のオススメで、駅近のバーに来た。大人っぽいお店だけど、私達みたいな学生の姿も多く、意外と入りやすかった。
「じゃあ、とりあえず乾杯ー!」
杏奈の一言で、私達はお互いのカクテルグラスをカチンと合わせた。
ほろ酔い加減になりながら杏奈の近況を聞いて、夕食代わりのおかずをいくつか食べた。
「大学の友達から聞いたんだけど、ひなたって相馬(そうま)優と付き合ってるんだって?」
「そ、そんなにウワサになってるの?」
「相馬優モテるから、何かと注目されてるんだよ。特に女に」
たしかに、大学で優と一緒にいると視線を感じることが多かった。
「相馬って優しいの?」
「うん、優しいよ。元彼と大違い」
「元彼の分まで可愛がってもらってるんだね」
「そう…なのかな?そうだと思う」
曖昧に答えた。昭との別れやその原因を知らない杏奈にはそこまで詳しく話せない。それに、今日は楽しみたいし。でも、杏奈の方は私の恋愛話に興味があるみたいで、色々訊いてくる。
「そういう男と付き合うの、大変じゃない?モテる彼氏だと余計な心配事が増えるっていうか」
「そんなことないよ。モテるけど、優は軽くないから」
優には今、安心感しかない。それがいいことか悪いことかは分からないけど、こうして彼氏の話をしていても、頭に浮かぶのは凜翔のことだった。凜翔の奏でていた曲、前にもどこかで聴いたことがある気がしたけど、思い出せない。