レンタル彼氏–恋策–
明るくなった室内を見て、優が一人暮らしをしているアパートだと気付いた。昭と付き合ってた頃、昭と一緒に何回か来たことがあるけど、彼女になってからここへ来るのは今夜が初めてだった。通りで見覚えがあるはずだ。
「ひなたのスマホで杏奈ちゃんって子が電話くれたんだ。同じ大学の子なんだって?」
「杏奈とは久しぶりに会って、盛り上がって飲んで……」
「杏奈ちゃん心配してたよ。もちろん俺も……。ひなががそんなに飲むとこ、初めて見た」
言うなり優はベッドに座り、優しく抱きしめてきた。男の人の体だった。アルコールが抜け切っていないせいか、そのぬくもりにドキドキして、同時に寂しくなった。
そっと腕を離すと、優は唇にキスをしてきた。いつもの優しい触れ方だったのが、どんどん濃厚なキスに変わっていく。そのままベッドに押し倒された。
「杏奈ちゃんじゃなく、真っ先に俺を頼ってほしかった」
「優……」
「ひなたの傷付いた顔、もう見たくない」
切なげにこちらを見つめる優の瞳は、私だけを映していた。首筋や頬にぎこちなく触れてくる優に、このまま身を任せてしまおうかな……。
凜翔を想っても届かない。紗希ちゃんには敵わない。だったらもう、優だけを見ていきたい。優に抱かれたら、昭や凜翔に対する煩わしい感情を捨てられるかもしれない。