レンタル彼氏–恋策–
優が告白してくれたおかげで、昭と普通に話せるようになった。一人で寂しくならずにすんだ。でも、私の言葉は、優の固い決心を揺るがすことはなかった。
「ひなたはずっと自由になりたがってたのに、俺のワガママで縛りつけてた。もう、いいよ」
「優……」
「幸せになって。そしたらまた、あの笑顔で惚れさせて?」
こんな優しい別れのセリフ、聞いたことないよ……。
罪悪感と、ほんの少しの同情。寂しさ。優との別れは彼らしい穏やかさに溢れていた。それが痛くて、涙がにじむ。
「ごめんね、優……。今までありがとう」
優は送ると言ってくれたけど、それを断り、タクシーに乗って一人で家に帰った。もうすぐ日付が変わりそうになっていて軽く驚いた。
心晴の顔が見たくなったけど、さすがにもう寝てるかもしれない。おとなしく帰宅し、シャワーを浴びてベッドに寝転んだ。
優に触れられたことを思い出しても冷静なのに、もしもあの手が凜翔のものだったら……。そう考えただけで鼻血が出そうなくらい顔が赤くなる。な、何考えてるんだ!
邪念を振り払うため、勉強机に座り映画のパンフレットを開いた。凜翔との初デートで買ったものだ。面白い映画だと思った時は必ずパンフレットを買うようにしている。凜翔も私の真似をして同じものを買っていた。
「紗希ちゃんともああやって映画見て一緒にパンフレット買ったりしてるのかな……」
さっそく気持ちが落ち込む。優と別れることで前に進めたのかもしれないけど、問題は山積みだ。そもそも、彼女いる人を好きになるって、無謀だよ、やっぱり……。