レンタル彼氏–恋策–
「人の優しさが身にしみる……。友達ってあたたかいね」
「ひなた……。ホントは我慢してたんじゃない?色んなこと」
心晴は心配そうにこっちを見つめた。さっき、彼女が何かを言いかけていたのを思い出した。
「心晴、さっき何か言おうとしてなかった?」
「……あ、うん!そのことなんだけど……。ひなたにお願いがあって」
いつになく真剣な瞳で、心晴は言った。
「引っ越す前に、ひなたとの楽しい思い出を作りたい。今年の大学祭、凜翔君も呼んで三人で回りたい」
「心晴のお願いなら聞いてあげたいけど、凜翔の連絡先知らないし……」
それに、凜翔とはもう関わりたくない。紗希ちゃんを大事にする凜翔なんて、見たくないから。
私の気持ちを知ってか知らずか、心晴は気丈に言った。
「そこは問題ないよ。凜翔君にはレンタル彼氏として来てもらうから」
「心晴が呼び出すの??」
「うん。彼氏役を求めてってわけじゃないけど、凜翔君には色々思うことがあってさ」
「そんな……。たしかにカップルで来る人も多いけど、学園祭にレンタル彼氏を呼ぶって、アリなの?」
「アリだよ。規約違反にならない範囲でお客さんの要望を聞き入れるのが凜翔君の仕事だしね」
「本気?」
「本気だよ」