Secret saturday
「ほら、奈々ちゃん集中して」
横から先生の声が飛んできた。
私ははっとして、問題文を読み直す。
私の隣にいるのは私の担当講師の先生であり、私が好きな人。
担当講師は中学の時に決めたんだけど、その時の私はまだ先生が好きじゃなかった。
ただ、優しいなと思って決めた。それだけだったのに、段々気になり始めて今に至る。
「先生、ここ、わかりません」
「どれどれ...」
先生がグイっと近付く。
ドキン。
体に力が入るのを感じる。
先生は今、大学2年生で、身長は185ある。
有名大学に通ってるし、サッカーをしてたらしく、文武両道。
髪の毛は大学生になったからと言って、私が中学生のときに急に茶髪にした。
ふわっと先生のあまい匂いが香る。
「この公式はー、こうやって応用すんの。わかった?」
「なるほど‼ わかりました」
口では冷静に言うけど、心はバクバク。
あぁ~、抱きつきたい‼
好きだよー。
手、握りたい。
それから、それから...。
しまった、いつもの妄想が...。
私は気を取り直し手を動かすのを再開する。
先生はきっと、私のこと真面目な生徒としか思ってない。
先生の立場だから、私に優しくしてくれる。
わかってるよ。
そんなの、知ってる。
こんなに近いのに、心は遠いよ。
先生、先生はどんな人が好きですか?
高校生のときはどんな生徒だったんですか?
趣味は何ですか?
わからないのは、問題じゃなくて、先生の事だよ。
もっと知りたいよ。
迷惑かな...。