愛され系男子のあざとい誘惑
「ねぇ、なんでキスしなかったの?そこはしとくべきでしょ。今時、小学生でもキスくらいするわよ」

「そんなの出来ないよ」

「何、カマトトぶってんのよ。一度はしようとしたくせに」

京香にそう言われて、黙るしかなかった。だってあの唇は反則。プルプルしていてセクシーでキスを誘う唇だった。むしろしなかったことを褒めてほしいくらい。


スズーッとアイスコーヒーを啜るとゴホゴホと噎せてしまった。本当に今日は何をやっているんだろう。


「でもさ、忘れているでしょ?配置換え。1ヶ月なんてあっという間に過ぎるのよ」



そうだ。すっかり忘れていた。配置換えがあるんだ。配置換えってことは後1ヶ月もしないうちに私はLiglossの担当から変わってしまう。


藤澤さんに会えなくなる。


「いいの?動かなきゃ何も始まらないのよ」

京香の言葉がガツンと重く響いた。キスをしようとしたのも好きだから。膝枕をしたのも好きだから。


でもこのままそれを伝えなければ、もうあのフロアに行くこともなくなってしまうのだから関わりもなくなる。
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