愛され系男子のあざとい誘惑
「さっきからずっと気になってたんだけど優美ちゃんって私服だと印象変わるね」

「あっ、こ、これは友達に借りたんです。私はいつも普段着なので」

「そうなんだ。そういう感じも可愛いけれど、ワンピースとかも似合いそうだよね。大きな花柄のワンピースとか俺、好きだな」


大きな花柄のワンピース買う!絶対買う。それくらい藤澤さんの言葉は私に大きな影響を与える。他愛ない話で盛り上がっているとコツコツとヒールを響かせて二人組の女性が私たちに近づいてきた。


「あのーLiglossの藤澤社長ですよね?」


えっ?社長?藤澤さん、社長だったの?知らなかった。


そういえば、どの企業も社長の顔なんて気にしたことがなかった。私は社員さんたちが来るまでの仕事だから基本、藤澤さん以外会ったこともないし。


パッと彼を見ると「あーっ、うん」と困り顔を浮かべていた。そんなことはおかまいなしかのような二人。特に口紅が真っ赤で長い髪をなびかせている人が社長にどんどんと詰め寄った。


「やっぱり!私たち、ずっと見てたんですよー。気づいてました?」


「えっ?あっ、ごめんね。彼女とおしゃべりに夢中で気づかなかった」


「彼女」と言った一言でその女性の視線が私に向けられた。品定めをされるように見られた後、私を強く睨みつける。


まるで『こんな女が彼女なの?』と今にも言い出しそうな敵意を感じた。
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