愛され系男子のあざとい誘惑
「それ、あげるわ。私、着ないし。タンスの肥やしになってたから」

「な、何言ってるの。ダメだよ、こんな高い服」

「あっ、こら動くな」

ワンピースですっかり満足していた私に「それで終わりじゃないから」と大きなコスメボックスを出してメイクとヘアアレンジもし始めた京香。

私はただ鏡の前に座って彼女の言うようにジッと目を瞑るだけ。でも「あげる」なんて言われても困る。


前の職場で働いていたときはこのワンピースのブランドを着てる後輩がいた。自慢してたことを覚えてる。

『このスカートめちゃくちゃ安くて一着10000円だったんですぅ』


そう言ってた後輩の顔を思い出して嫌な気分になった。


「ちょっと、優美。顔がブサイクになってるわよ。メイクしにくいでしょ」


「・・・私ね、前の職場人間関係のトラブルで辞めたんだけど、ある後輩にね、なんか目つけられてハブられたんだ。それでね職場にも居づらくなってやめたんだ」


「ちょっと、なんで今そんなマイナスな話をするのよ。もしかしてその後輩がその服を着てたの?」


「この服じゃないけどね」


「あのね、服に罪はないのよ。その女があんたをいじめた女でもその女が気に入って買った服なんだからね!でもそのブランドを見るとマイナスイメージだって言うなら今からプラスに変えてきなさいよ。嫌われるの嫌よ、誰だって
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