愛され系男子のあざとい誘惑
誘惑に酔わされて
エレベーターが54階に到着した。ゆっくりとエレベーターを降りる。少し足を進めると目に入ってきたのはMoon Mirrorの文字。

お店の前までやってきた。バーだと聞いていたから隠れ家のようなお店を想像していたけれど、先を見ても少し薄暗い廊下が続いてるだけでワンフロア全てがお店みたいだった。

こんなに高級感の漂うお店に一人で入る勇気なんて持ち合わせていない。やっぱり帰ろうと諦めようとしたところ「いらっしゃいませ」と声を掛けられてしまった。


「お一人様ですか?」


そう聞かれ、俯いていた顔をすっと上げるとそこに立っていたのはあの日、藤沢さん、いや藤澤社長の後ろにいた女性だった。どうしよう。こんなところまで会いにきたのかと怒鳴りつけられるだろうか。


「カウンター席でよろしいですか?テーブル席も空いているんですが、今日は特別なバーテンダーがいますのでカウンターがオススメですが、いかがなさいますか?」


「・・・カ、カウンター席でお願いします」


なんであんなことを言ってしまったのだろう。つい、女性にどちらにしますか?と聞かれ答えてしまったものの「かしこまりました」と店内に案内されてしまい、もう後戻りはできない。
< 36 / 77 >

この作品をシェア

pagetop