愛され系男子のあざとい誘惑
「びっくりした。すごい可愛いよ、優美ちゃん」

目の前の藤澤社長に見惚れて、何も言えないでいた。聞きたいことが山ほどある。どうしてここにいるんですか?バーテンダーをしているんですか?あの女性は誰ですか?


でもそれを聞けないくらい、彼が来た瞬間ザワザワと騒つく人たち。さっきまでの和やかな空気が一瞬にして変わった。やっぱり彼はすごい人なんだ。そう改めて思った。


「せっかくだし、何か作ろうか?お酒は強いほう?」


「あ、あの・・・藤澤しゃ・・・」


「社長」と言い掛けるとそっと唇に人差し指を当てられた。そして、バーカウンターから少し身を乗り出し、私の耳元で囁いた。


「社長は禁止。今はヒロって呼んで」


そっと離れた彼は私にニコッと微笑んで「わかった?」と優しく言うので、心臓が今にも飛び出しそうなくらいドキドキとしていて何も考えられない私はただ、コクコクと頷いた。


あんな言い方ずるい。あんなことをするなんてずるい。彼の人差し指が私の唇に触れた。ニコニコと笑いながら、私のお酒を考えてくれている藤澤社長の人差し指ばかり見ている私。


なんだかとても悪いことをしてるような気分にさせられた。
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