愛され系男子のあざとい誘惑
藤澤社長は慣れた手つきで何種類かのお酒を手に取り、シェーカーに入れるとカシャカシャと振った。ドラマでは見たことあるけれど実際に見るのは初めて。


やっぱりこんなに素敵なオーラのある人がシェーカーを振っているとサマになる。お客さんの視線もみんな藤澤社長に釘付け。


「はい、優美ちゃん。可愛い優美ちゃんにぴったりのカクテル、『ピンクレディ』」


そう言って差し出されたグラスの中には、可愛らしいピンク色で上の部分が白くなっている二層式のカクテルだった。


カクテルなんていつぶりだろう。前の職場の飲み会以来かもしれない。でも、こんなに本格的なカクテルは初めて。


「アルコールは入ってるけれど、甘めで飲みやすいと思うよ。ちなみにピンクレディの由来はイギリスで上映されてた舞台なんだって。そこの打ち上げで初めて披露されたことからその名がついたらしいよ」


「そうなんですか。い、いただきます」


藤澤社長と目を合わせるたびに入ってくる夜景。バーカウンターにいる社長の後ろにある全面ガラス張りの窓が夜景を映し出すから社長と夜景を一緒に見てはまた惚れ惚れしてしまう。


いつまでもただジッと見ていたいけれど、せっかく作ってくれたカクテルを飲まないわけにはいかない。私はグラスを手に取り、そっと口をつけた。
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