愛され系男子のあざとい誘惑
小悪魔が私の耳元で囁いた。こうやって何人もの女性たちを魅了し、虜にしてきたのだろう。私だってそう。


ドキドキしているし、このまま頷いてしまいそう。でも酔っていたとはいえ、それだけは嫌だった。

『・・・いやです。わたし、モブにはなりたくない。いちどだけなんていやです』


『ゆ、優美ちゃん?!』


『彼女がいるのに口説いたりしないでください。私はそんなに軽い女じゃない。こうやってオシャレをして勇気を振り絞ってここに来たのも一夜を望んでじゃない。会いたかったから。ただ、あなたに会いたかったんです』



はあ。今思い出すだけでもよくあんな啖呵を切ったと思う。藤澤社長が目を丸くして驚いていたことも鮮明に覚えている。



『と、とにかく出ようか、優美ちゃん。ほら、お店にも迷惑だし、ゆっくり外で話そう』


『・・・いきません。嫌だって言ったじゃないですか』


私の態度に業を煮やした社長は少しムッとした顔をしてバーカウンターから出て来て私の前に立った。そしてこともあろうことかそのまま私をお姫様抱っこで抱えあげた。


『ちょ、ちょっと!』


『言うこと聞かない子は、お仕置きしようか。とりあえず二人っきりになるとこ連れてくから』
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