愛され系男子のあざとい誘惑

立場は形成逆転。真っ赤になる私を無視して藤澤社長はツカツカと店の外に向かって歩き始めた。そのざわめきに駆け寄って来たあの女性にこう声を掛けて。


『姉貴。今日、俺店じまいね』


昨日の醜態を思い出していると、突然部屋をノックする音が聞こえてきた。出てもいいのかな？間違いかもしれない。


そう思っていたけれど何度もノックされて、とりあえず出てみようとドアに近づいた。


「は、はい」

「ルームサービスをお持ちいたしました」

「ルームサービス？！頼んでませんけど」

「お連れ様からのご注文です」


そう言われ、渋々ドアを開けるとワゴンを引いた黒いスーツの人が「失礼します」と中に入ってきた。そしてワゴンの上の料理を赤茶のテーブルの上に並べた。


「お連れ様、藤澤社長より申しつかっております。ごゆっくりお召し上がりください」


料理を並べた黒スーツの男性はそれだけ言うと一礼をしてまたワゴンを引いて出ていってしまった。そう言えばあの一言のインパクトが強すぎたけれど手紙にそんなことも書いてあったかもしれない。



『多分、食欲はないと思うけれど、ここの中華粥は絶品だし、二日酔いでも食べられると思うから頼んでおくね。ゆっくり休んでいいからね。ここは俺からのプレゼント』