愛され系男子のあざとい誘惑
お姉さんは運ばれてきた美味しそうなパンケーキに舌鼓を打ちながら、私を牽制するような言葉を続けた。


「あなたはあの子のターゲットにされたのかもしれないわね。優しく甘い言葉を掛けて自分を好きにさせるターゲット。本当に罪な奴よね、弟ながら」


そう言ってモグモグと口を動かして「美味しい」とまたパンケーキを口に運んだ。ターゲット。自分を好きにさせるターゲット。その言葉が私の中に重くのしかかった。


確かに社長は「可愛い」と言ってくれたけれどそれだけ。勝手に私が彼を好きになってしまった。でも、それが彼の作戦だったとしたら。私は掌で踊らされて嘲笑われていたのかもしれない。


「・・・私、見る目ないですね」


私がボソッと呟いた一言にお姉さんの手がぴたりと止まった。本当に見る目がない。もし、本当に社長がそんな人だったとしたら。


「かっこよくて優しくて、王子様みたいな人だからって人を騙すような人じゃないって決めて色メガネで見ていたなら本当に見る目がない。騙されたのなら自業自得です。でも、もしそれが牽制なら私はもう少し自分の見る目を信じたいと思うのですがどちらでしょうか?」


私の悪い癖は相手にすぐ反抗してしまうところ。それが仇となって前の会社ではハブられた。でも相手の言いなりになんてなりたくない。


たとえお姉さんが本当のことを言ってくれていても、牽制のために言ったことだとしても選ぶのは私だから。だから騙されたのなら仕方ない。
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