愛され系男子のあざとい誘惑
「まさかそんな返しがくるなんて思わなかった。あなたなら本当のヒロのこと分かってくれるかもしれない」


私の問いかけにお姉さんの返しも意外だった。さっきまで少しピリピリした空気だったのにお姉さんがフワッと笑顔を見せた途端、優しい空気に変わったようなそんな気がした。


「ねえ、パンケーキ好き?食べかけだけどお腹いっぱいになっちゃって。残すのもあれだから食べてくれないかな?」


そう言って最初から綺麗に半分に切って口もつけないで残していたパンケーキの乗ったお皿を私に渡してきた。「いりません」なんて言えるはずもなく、「ありがとうございます」といただくことにした。


食べやすくパンケーキを切って口に入れる。フワフワのパンケーキは本当にさっき中華粥を食べた後で尚且つ二日酔いということを忘れるくらい美味しい。

つい、夢中になって食べ進めてしまった。そんな私が面白かったのかお姉さんは声をあげて笑った。


「ヒロはね真面目なのよね。少しくらい肩の力を抜いてほしいと思うくらいに仕事熱心なの。だからたまにああやって『ちょっと手伝ってほしい』って言って夜遅く少しだけバーに呼んで息抜きさせるの」


「もしかして自分の都合のいいときにしか会わないっていうことも・・・」


「どう取るかはあなた次第。私が話すのはそれだけ。ほらっ、優美さん食べて食べて。あなたの食べてる姿見ていて微笑ましくなるわ」


どう取るかはあなた次第。だとすれば私はお姉さんの言葉を信じよう。やっぱり藤澤社長を悪い人だとは思いたくないから。


その日はパンケーキとコーヒーをごちそうしてもらい、イヤリングが見つかれば連絡をするからとお姉さん、舞さんと連絡先を交換して別れた。
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