愛され系男子のあざとい誘惑

「というかいくらなんでもこのB.C. square TOKYOで働けるからと言ってもこんな掃除のおばさんとかマジてありえないしー！あんたまさか藤澤社長が自分に気があるとでも思ってるんじゃないでしょうね？てか聞いてる？なんか言えば？」


彼女の逆鱗に触れてしまった。かなり怒っているみたい。さすがにこれ以上無視を続けると他の人の迷惑にもなるし、藤澤社長にも迷惑がかかる。


「・・・藤澤社長は仕事のお礼に食事に誘ってくださっただけで他意はありません」


「当たり前じゃない。あんたみたいな掃除婦があの人と釣り合うわけないでしょ。私の知り合いがLiglossにいるんだけど藤澤社長ってターゲットを決めて女の子をゲーム感覚で落とすのが趣味らしいわよ。でもさすがに掃除婦まで目をつけるなんて鬼畜ー！目障りなのよ、あんた。さっさとこのビルから消えろって言ってんの」


彼女は持っていたコーヒーを勢いよく私にかけた。もう嫌だ。もう聞きたくない。耳を塞ぎたくなる。それなのに高笑いが嫌でも耳に入ってくる。


やっぱり舞さんの言ったことは忠告だった？私は恋する色メガネで見ていただけ？ざわざわと騒つく周囲の声も耳に入らないくらい私の心は粉々になりそうだった。


「・・・へえ。すごく面白い話をしてるんだね、俺も入れてよ。鬼畜社長とかやばいよね」


それまで騒然としていたその言葉で一瞬にして静寂に包まれた。恐る恐る顔を上げるとスーツ姿の藤澤社長が見たこともないような冷たい表情で彼女を睨みつけていた。