愛され系男子のあざとい誘惑
黒髪で童顔。おまけに髪型はこの間切りすぎて失敗した顎ラインのショートボブ。かわいい女優さんがやっていたからと真似て失敗した。鏡を見るたび嫌になる。


身長だって158センチと160には届かない中途半端。前の仕事は職場での人間関係のトラブルで三か月前に辞めた。


でも不況と資格すらまともに持っていなかった私は、なかなか正社員になることもできず、時給の高いB.C. square TOKYOのクリーンスタッフと居酒屋店員というパートとバイトの掛け持ちをしながら就職活動をする日々だった。


「わかんないでしょ。第一名前聞けって言ってるだけで告白しろって言ってるわけじゃないんだからそんなに無理、無理ばかり言わなくてもいいじゃない」


「こ、告白?!そんなの無理!絶対に無理だよ!」


「あはは。確かに告白は無理よね。でも、明日から少し楽しみができたじゃない。いつも何も楽しみがないってぼやいてたんだし」


「でも、会えるかなんてわからないし、会ってもどうしていいのかわからないよ」


「だから名前を聞きなさいって言ってるのよ」


結局、私たちは仕事を終えてから二時間ほど話し倒して帰ることにした。帰りのエレベーターに乗る前、なんとなく前髪を整えてみたり、もしかして乗ってきたらどうしよう。


なんて期待もしたけれど、結局彼に会うことはなかった。

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