愛され系男子のあざとい誘惑
52階のフロアはホテルと作りは似ていたものの扉の数は4つ。ということはここに住んでいる人は4名?そのうちの一つはアラブの石油王なのかな。

ポワンと石油王のイメージが頭に浮かんだけれど今はそんなこと、どうでもいいと首を振ってかき消した。


そのまま社長に手を引かれ、右端の扉の前で社長が止まる。右上に設置されてあったのはさっきのよりも小さなオートロック。そこにも社長は鍵を差し込んだ。


「どうぞ入って。今、お湯沸かすから」


「お邪魔します」


黒のスリッパを出され、それを履いた後、少し先を歩く社長の後をついていった。玄関だけでもかなり広い。白を基調とした部屋。廊下を抜けるとドアがあり、そのドアを開けた瞬間、差し込んできた光。

これぞ高級マンションの一室と言ってもおかしくない。大きなリビング、窓からは東京タワーが見える。高級そうな白い革のソファ、白のダイニングテーブル。全てがうちにあるものとは違って改めてすごい人なんだと実感した。


「・・・やっぱりすごい」


「お風呂沸かして来るからソファにでも座ってて」


桁違いと思わしきソファにこんな濡れた服のまま座るなんてできない。社長がお風呂場に行った後も呆然とそのままそこに立っていたままの私。


それにしてもこのビルにこんな隠し部屋があるなんて知らなかった。
< 63 / 77 >

この作品をシェア

pagetop