愛され系男子のあざとい誘惑
その会話を思い出して赤くなった。舞さんに気づかれないように平然を装ったけれど、「顔、赤いよ」と指摘されて、お茶を吹き出しそうになった。


「でもヒロ、優美ちゃんが来てくれてやっぱり変わったと思う。仕事が最優先なのは変わらないけれど少しの時間でも休む時間を作るようになったから。寂しい思いさせちゃってると思うけれど支えてくれてありがとう」


「と、とんでもないです。私のほうがヒロさんに支えられています。というかうまくヒロさんに飼いならされているような気がします」


「あはは、あいつそういうのうまいからね。ネクタイも結ばされてるんでしょ?」


「・・・はい。全然うまくなれないんですが、結んでほしいと言われて」


最初の頃はカジュアルな服装だったはずなのに最近は毎日、スーツで出勤しているヒロさん。「結んでくれる?」といつもお願いされるから毎日結ぶけれどいつまでも上達しない。


それなのに、いつも頭を撫でて『優美ちゃんに毎朝、ネクタイを結んでもらえて幸せ』なんて言われると苦手でもやってあげたくなる。


「可愛いな、もうヒロの毒牙にかかっているというのに健気だわ」
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