スパダリ副社長の溺愛がとまりません！

副社長は私たちから離れて電話に出た。すると、その姿を見ていた社長が、ため息交じりに言った。

「大変だよな。橘副社長も。あんなに有名な大企業の副社長なのに、こうやって自ら出向いてくるんだもんな」

「あの……。社長さんと橘副社長は、以前からのお知り合いなんですか？」

ふたりの話し方から、初対面ではないんだろうなと感じていた。

「そうなんだよ。といっても、オレが融資の相談に行ったことがキッカケなんだけど」

と、社長は少し照れくさそうに話してくれた。どうやら五年前、会社は立ち上げたばかりで、地場銀行ですら、融資をしてくれなかったらしい。

そのとき、たまたま目についたのが橘トラストホールディングスで、そこに相談に行ったとか。ここでも最初こそ取り合わなかったものの、縁あって橘副社長と話ができ、融資をしてもらえることになったとか。

「橘副社長が、うちの成長を信じてくれたからな。五年で、ここまで立派になった。あの頃は、まだ副社長じゃなかったけど」

と、社長は苦笑いをしていた。副社長が、まだ副社長じゃなかったから実現できた出会いだと、話してくれた。

「あの人のおかげだよ。立場が上になっても、こうやって目をかけてくれる。いろんな噂があるみたいだけど、俺はあの人を信じるね」