甘くもビターな恋の味。
「髪、しばらないの?」
靴を履き終わる頃、お母さんに言われた。
「高校は、しばらなくてもいいからしばらない」
「そっか」
あまり愛想のない会話だけれど朝はいつもこんな感じ。
夜はもっと活気があるんだけど…
「はやく乗りなさい」
お母さんに言われ、車の助手席に乗る。
お父さんは仕事で入学式はお母さんだけ。
車に乗って数分した頃、
「制服、似合うかな。」
疑問に思ったことを口にしてみる。
「ええ、似合ってるわよ」
お母さんに言われ、心が軽くなる。
「そっか。ありがとう」
私がそう言って会話が終わる。
家から学校まではさほど距離はない。なので会話がなくてもあまり気まずくはない。