いつも、雨
学費免除なだけでなく、返却しなくていい多額の奨学金を給付されるらしい。

さらに、3年後の高校受験、もしくは6年後の大学受験で難関校に合格すると、難易度に見合った臨時ボーナスまでもらえる。


要人は、どうせなら日本で一番の進学校を受験するつもりでいる。


そんな学業面での優等生は、スポーツも難なくこなせるし、クラス委員や生徒会役員も常に兼任していた。

親分肌で、カリスマ性があるのだろう。

要人の周囲にはいつもヒトが集まった。

地元の悪友どもとは、同じ中学に進まなかったにもかかわらず、彼らのリーダー的存在であることに変わりはない。

いわゆる「不良」と呼ばれる悪童を束ねる要人は、どこからどう見ても「不良」なのだろう。

しかし、要人自身は、自分が優等生とみられることも、不良とみられることも、鼻で笑って達観している。

どちらとも言えない。

いや、どっちでもいい。

どうせ、二親揃った、ええとこの子ぉには、かなわない。

人生は不条理で不公平だ。 

生まれながらにして、その地位を隔ててしまう。 

如何ともしがたいそんなやるせなさを、要人はいつも持て余していた。


象徴的なのが、目の前のこの兄妹だ。

自分より、何もかも劣る恭風に「さま」を付けて呼ばなくてはいけない。

6つも年下の、かわいいかわいい領子を、遠慮なくかわいがることもできない。



「どっちでもええんちゃう?良くても悪くても、竹原は竹原だし。……そうだ。あの乞食のおじいちゃん、まだ生きてる?」

恭風の言葉に、領子は目を見開いた。

 
乞食?

乞食って、ホームレス?

お兄さまってば、そんなかたとお知り合いなの?


要人は、硬直している領子を気遣わしげに見ながらも、恭風の興味を煽った。

「乞食ゆーたら、怒られるで。あのヒトは見た目は汚いけど、ヒトから食べ物や金銭を恵んでもろたことはない、らしいで。」

「え?……じゃあ、どうやって生きてるの?ホームレスって、生活保護受けられるの?」 

「……誰の世話にもなってはらへん。それどころか、誰もあのヒトを追い払えへん、らしいわ。よぉわからんねんけど、ホームレスは仮の姿みたいやな。」 

「なに?スパイ?探偵?」 


領子には、2人が話しているホームレスがよくわからない。


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