いつも、雨
「そちらに、貸金庫をお持ちでしたよね?橘家の弁護士とお作りになりましたでしょう?……同じ店舗にもう1つ、領子さま名義で全自動貸金庫を作りました。このカードで自由に出し入れしていただけますので。」
「……え……そんなことできるの?……勝手に作れたのですか?全自動って、なぁに?」
橘家は客人も多く、使用人もいる。
現金や株券、登記簿など大切なものは全て銀行の貸金庫で保管している。
それ以外にも、高価な時計や、宝石類はなるべく家に置かず、銀行に預けるように……と、当主の千秋は家族全員にそれぞれの貸金庫を借りた。
……ただの通りすがりの盗難なら仕方ないで済むが……金に困った身内の盗難はやるせない。
千秋は盗られるほうにも、責任の一端があると考えていた。
かつては貸金庫の利用をめんどくさった夫人も、遊びに来た旧友に指輪を盗られそうになったことがあってから、自宅に貴金属を置かなくなった。
領子も、要人からもらったアクセサリーのほとんどを貸金庫で管理してもらっていたが……いつも銀行員がボックスを持って来てくれる方式だ。
「ええ。貸金庫にもイロイロありましてね。こちらはこのカードと暗証番号だけで出し入れできます。」
「1店舗に1人1つしかお借りできないと聞きましたが。」
領子の疑問に、要人は笑顔で答えた。
「蛇の道は蛇、ですよ。……ご家族に知られたくないモノはこちらに保管なさるといいでしょう。」
これからも領子に「お土産」を渡し続けたい……。
だが、領子の身の回りに要人の「お土産」が増え続けると、どれだけ愚鈍な夫でもすぐに気づくだろう。
……それが、他の男からのプレゼントだと。
要人の思惑に気づいて、領子はようやく笑顔を見せた。
「ありがとう。……ところで、同じカードを竹原も持っているの?」
「いえ。保証人にはなりましたが、カードは作りませんでした。……俺に内緒のモノも隠せますよ。」
「……他の男性からのプレゼントなんて受け取りませんわ。」
ぽつりとこぼした領子の言葉に、要人の眉毛がぴくりと動いた。
これだけの美人だ。
人妻だと言っても懸想する男は後を絶たない。
橘千歳氏は、いったい何を考えているんだ。
どうして妻を野放しにするんだ。
……俺なら、絶対に独りでは外に出さないのに……。
身勝手で理不尽な苛立ちは、結果的に、千歳の帰国をさらに遅れさせた。
「……え……そんなことできるの?……勝手に作れたのですか?全自動って、なぁに?」
橘家は客人も多く、使用人もいる。
現金や株券、登記簿など大切なものは全て銀行の貸金庫で保管している。
それ以外にも、高価な時計や、宝石類はなるべく家に置かず、銀行に預けるように……と、当主の千秋は家族全員にそれぞれの貸金庫を借りた。
……ただの通りすがりの盗難なら仕方ないで済むが……金に困った身内の盗難はやるせない。
千秋は盗られるほうにも、責任の一端があると考えていた。
かつては貸金庫の利用をめんどくさった夫人も、遊びに来た旧友に指輪を盗られそうになったことがあってから、自宅に貴金属を置かなくなった。
領子も、要人からもらったアクセサリーのほとんどを貸金庫で管理してもらっていたが……いつも銀行員がボックスを持って来てくれる方式だ。
「ええ。貸金庫にもイロイロありましてね。こちらはこのカードと暗証番号だけで出し入れできます。」
「1店舗に1人1つしかお借りできないと聞きましたが。」
領子の疑問に、要人は笑顔で答えた。
「蛇の道は蛇、ですよ。……ご家族に知られたくないモノはこちらに保管なさるといいでしょう。」
これからも領子に「お土産」を渡し続けたい……。
だが、領子の身の回りに要人の「お土産」が増え続けると、どれだけ愚鈍な夫でもすぐに気づくだろう。
……それが、他の男からのプレゼントだと。
要人の思惑に気づいて、領子はようやく笑顔を見せた。
「ありがとう。……ところで、同じカードを竹原も持っているの?」
「いえ。保証人にはなりましたが、カードは作りませんでした。……俺に内緒のモノも隠せますよ。」
「……他の男性からのプレゼントなんて受け取りませんわ。」
ぽつりとこぼした領子の言葉に、要人の眉毛がぴくりと動いた。
これだけの美人だ。
人妻だと言っても懸想する男は後を絶たない。
橘千歳氏は、いったい何を考えているんだ。
どうして妻を野放しにするんだ。
……俺なら、絶対に独りでは外に出さないのに……。
身勝手で理不尽な苛立ちは、結果的に、千歳の帰国をさらに遅れさせた。