いつも、雨
「……少し、熱……ありますね。風邪かな。……いや。領子さま?もしかして……。」

「?……まだ身体が火照ってるだけじゃなくて?」


チュッと、唇をついばむようなキスをされて、領子は目を開けた。

至近距離で要人の顔色。


思わず手を伸ばした。


「綺麗なお鼻。引き締まった精悍な唇。……切れ長の目。……全部、大好き。……顔だけじゃなくてよ?」


領子の白い指がくすぐったくて、心地いい。

要人はそっとその手を捉え、唇を這わせてから、言った。


「俺もですよ。……領子さま……基礎体温は、お続けになってますか?」


突然すぎて、何を聞かれたのか、一瞬わからなかった。

「……ええ。一応。姑がチェックするものですから。……あまりちゃんとしたグラフにならなくて……よくわからないんだけど……。……そう言えば、このところ熱が高かったわね。風邪かしら。」


のんきにそんなことを言う領子に、要人はため息をついた。


「高温期でしょう。風邪じゃない。……たぶん、妊娠されてますね。」

「え?」



キョトンとしている。

想像もしてなかった……そんな顔だな。



要人は、そっと領子を抱き寄せた。

「おめでとうございます……と、言っていいのかな。……産んでくれますよね?」

「……え?……ねえ?何を言ってるの?」

領子は、顔を上げた。


要人の目が、いつも以上に優しい……けど……けど……え……?


「あの……よくわからないんだけど……妊娠したら、ご飯が食べられなくなるんじゃないの?つわりとか?……それに、妊娠って……」


誰の子?

夫の子じゃないの?

……竹原の子供……?



あわあわしてる領子に、要人はキスを落とした。

「そのあたりは個人差があるから、なんとも。……安定期に入るまで、心配だな。とりあえず、病院にお連れしましょう。」

「これから?行くの?」


不安そうな領子は、たまらなく煽情的だったけれど自重した。

「ええ。早いほうがいいでしょう。……大丈夫です。おそばにいますから。」

「でも、……だって……」

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