いつも、雨
恭風(やすかぜ)は、顔をしかめた。
「……領子(えりこ)のゆー通りやな……。話にならんわ。」
「領子さまの?……何か……」
思わず顔を上げたら、恭風と目が合った。
思いつめた要人(かなと)の目を見ると、恭風の怒りは、すーっと溶けてしまった。
……あかん……。
わしは、なんぼほど、竹原に弱いんや……。
実の妹は叱り飛ばせても、竹原は……あかん……。
恭風はため息をついて、要人に対面のソファを指差した。
「まあ、座り。」
要人は緊張したまま、ソファに座った。
タイミングよく、キタさんが紅茶を運んできてくれた。
甘い優しい香りが、要人を励ました。
「キタさん。領子はまだ出て来いひんか?……ゴン太やなあ。ほな、百合子の様子見てきて。泣きやんでたら、挨拶に来てもらい。」
恭風はそう言ってキタさんを追いやった。
そして紅茶をすすってから、言った。
「家族を捨てる気ぃか。ええ加減にしぃや。」
「……俺にとって、領子さまより大切なものなんか、ありませんから。」
まるで少年のように青臭いことを言った要人に、恭風は苦笑した。
「ほんま、たいがいやな。……そんなもん、いちいち言わんでも、今さらやろ。知ってるわ。せやけどな、何でそうならそうで、もっと早よ、言わんのや。……いや、それこそ、今さらやな……。」
「……その都度、意思表示はしてきたつもりなのですが……領子さまが橘家に嫁がれるのを阻止することはできませんでした。……私の、力不足です。」
まるで教師か親に謝罪と言い訳でもしているように、要人はうなだれた。
「あきらめが悪いにもほどがあるわ。あんたも。領子も。阿呆やろ。……どうするんや?こんなこと、言いとぉないけどな、いっそ、すっぱりあきらめたらどうや?領子はあんたとは、死んでも再婚せんてゆーてるで。」
さすがに、要人は傷ついた。
……死んでも……か。
はは……。
なんて、おかただ……。
愛してるくせに。
愛し合っているのに……何で、そこまで頑ななんだよ。
「……領子(えりこ)のゆー通りやな……。話にならんわ。」
「領子さまの?……何か……」
思わず顔を上げたら、恭風と目が合った。
思いつめた要人(かなと)の目を見ると、恭風の怒りは、すーっと溶けてしまった。
……あかん……。
わしは、なんぼほど、竹原に弱いんや……。
実の妹は叱り飛ばせても、竹原は……あかん……。
恭風はため息をついて、要人に対面のソファを指差した。
「まあ、座り。」
要人は緊張したまま、ソファに座った。
タイミングよく、キタさんが紅茶を運んできてくれた。
甘い優しい香りが、要人を励ました。
「キタさん。領子はまだ出て来いひんか?……ゴン太やなあ。ほな、百合子の様子見てきて。泣きやんでたら、挨拶に来てもらい。」
恭風はそう言ってキタさんを追いやった。
そして紅茶をすすってから、言った。
「家族を捨てる気ぃか。ええ加減にしぃや。」
「……俺にとって、領子さまより大切なものなんか、ありませんから。」
まるで少年のように青臭いことを言った要人に、恭風は苦笑した。
「ほんま、たいがいやな。……そんなもん、いちいち言わんでも、今さらやろ。知ってるわ。せやけどな、何でそうならそうで、もっと早よ、言わんのや。……いや、それこそ、今さらやな……。」
「……その都度、意思表示はしてきたつもりなのですが……領子さまが橘家に嫁がれるのを阻止することはできませんでした。……私の、力不足です。」
まるで教師か親に謝罪と言い訳でもしているように、要人はうなだれた。
「あきらめが悪いにもほどがあるわ。あんたも。領子も。阿呆やろ。……どうするんや?こんなこと、言いとぉないけどな、いっそ、すっぱりあきらめたらどうや?領子はあんたとは、死んでも再婚せんてゆーてるで。」
さすがに、要人は傷ついた。
……死んでも……か。
はは……。
なんて、おかただ……。
愛してるくせに。
愛し合っているのに……何で、そこまで頑ななんだよ。