いつも、雨
「ほんまに……よぉできた息子さんやなあ。昔の竹原にそっくりや。」

「……はは。あいつのほうが、外面(そとづら)がイイというか……社交的ですよ。娘は内向的ですが、義人なら百合子さまも打ち解けてくれるだろうと思いまして……。」

義人は、首を傾げてから、ボソッと続けた。

「一目惚れ、してしまわれたかな……。」

「……わたくしにも、そんな風に見えました。」



困った表情の2人を、恭風はからからと笑った。

「昔のあんたらみたいやな。まあ、子供のこっちゃ。逢わんくなったら、すぐ忘れるやろろ。……しかし、ピュアな想いっちゅうのは、ええもんやな。なんか、わしまで、気持ちが若返って、新しい恋したくなったわ。」



……恭風さまは、常に新しい恋を追い続けていらっしゃるが……。

笑顔でスルーした要人に、恭風は言った。


「ほんでな、家も新しくしてほしいんや。考えてんけどな、この土地、竹原、買わへんか?……で、代わりに、小さい家を建ててーな。わしと恭匡が住むための家を東京に一軒と、領子と百合子が住むための家を京都に一軒で、どや?」

「お兄さま!」

寝耳に水な兄の提案に、領子は思わず声を上げた。


どうして、わたくし達は京都に住むことになっているの!?

そりゃあそのほうが、竹原との時間は増えるでしょうけど……百合子の学校もあるし……。


不満そうな領子を無視して、恭風は要人に言った。

「けっこうエエ話やと思うねん。ほら、ここ、めちゃ広いし、一等地やん?こんなとこに本社ビル建てたら、竹原の会社の格が上がる思わんけ?」


「……このお屋敷とお庭を、取り壊すのですか?」

さすがに、それには賛同しかねた。


物心つくまえから、このお屋敷にはよく遊びに来た。

亡き大奥さまにかわいがっていただいたのも、領子さまに恋心をいだいたのも、このお屋敷だった。

要人にとっても、大事な場所だ。


だが……。
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