いつも、雨
義人は、それについては触れようとせず、敢えて話題を変えた。

「これから飲み直すけど、合流しいひん?」


断わることを想定してるくせに、義人は笑顔でそう誘った。



……気まずくて、この場から逃げ出したいらしい。

この話はもう嫌だってことだろうな。


セルジュもまた、笑顔で断わった。

「パス。……そっちの友達じゃなくてさ。女子校の子達を招待したげなよ。義人のお母さん、彼女たちとだとノリが合って、楽しそうだよ。出身校が同じってだけで、親近感がわくんだろうね。」



このゴールデンウィークに、親友の梅宮彩乃の彼女とその友人たちが遊びに来て、そのまま泊まって行った。

いわゆる女子校のノリに、セルジュはドン引きしたが、佐那子は懐かしかったらしく女子高生と一緒になってはしゃいでいた。

「確かに、お母さんは喜ぶやろけど……俺らも、つき合わされるで?赤毛のアンの世界に。」

「……ん。まあ、そうだろうね。でも彼女らは下品じゃないから。無邪気でかわいいよ。」


言外に、今日連れて来た夜遊び仲間は下品だから関わりたくない……と、セルジュは言っていた。



義人は肩をすくめて、仲間のもとへと向かった。


「……素直じゃないなあ。……義人も……あいつのお父さんも、お母さんも。」

しみじみとそうつぶやいて、セルジュはまたシャンパンをクイッと飲み干した。




「あー!セルジュ!独りでお酒飲んでる!不良!不良!」

竹原家で唯一人、素直な由未がペタペタと素足でやって来た。


セルジュはしれっと言った。

「大袈裟だね。フランスでは水代わりだよ。16歳から飲めるし。」

「ここ、日本やもん。」

「……僕、半分フランス人だもん。……向こうの離れで、純日本人の義人たちも酒盛りしてるよ。……それより、由未、裸足。冷えるよ。靴下か、せめてスリッパを履かないと。」

姑のような小言に、由未は顔をしかめた。


「セルジュ、年寄りみたい。」
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