いつも、雨
「佐那子。起きなさい。佐那子……。」

わざわざ小声でそう囁きながら、要人は妻の身体をまさぐった。

乳首をくにゅくにゅともてあそび、膝を割り、下着の中に手を入れる。


さすがに、佐那子は目を覚ました。

「え……なに?……要人さん?……何してるの?」


驚く佐那子を左手でしっかり抱きかかえて、右手は秘部を優しく刺激した。

佐那子が、たまらず、甘い声をあげた。



「……いやか?」


逃れようともしていない。

嫌悪感も見せない。

要人の胸にしがみついて、突然の過ぎた快楽に身を震わせてる妻に、わざわざ承諾を取る……。


どれだけ臆病なのか……。


自分の滑稽さと惨めさに、要人は気づいた。



しかし、佐那子は、小声で言った。

「だいすき……。」



胸がいっぱいになった。


もしかしたら、佐那子は寝ぼけているのかもしれない。

かつてを……愛情と信頼に満ちあふれていた日々を思い出して、夢見心地なのかもしれない。

……そんな不安はあるものの、それでも要人は妻を愛しく想った。


「わたしも、好きだよ。」

要人は、そう囁いて、佐那子の中に自ら飛び込んだ。





……嘘つき……。

佐那子もまた、夢かうつつか……よくわからなかった。

都合のいい夢を見ているのかもしれない。


……でも、いいわ。

幸せだもの。


佐那子は、すっかり忘れていた快楽に身を任せた。


そうして2人はいつの間にか眠りに落ちた。







明け方、目覚めた要人は、佐那子が自分に背中を向けて眠っていることに……違和感を覚えた。

昔は、意地でも俺の腕の中で眠っていたのに……。

いや。

問題は、そこじゃない。


……途中で……寝てしまったのか……。

最後までイッた覚えがない。

たぶん、行為の途中で、眠ってしまったのだ。


……なんてことだ……。

佐那子は……どう思っただろう……。


同じタイミングで2人とも眠ってしまった……なんて、都合のいい偶然、ないよな。


たぶん途中で寝てしまった俺に……呆れたのではなかろうか……。


最悪だ。




要人は、逃げ出すようにベッドを抜け出した。


空が白むのを観ながら、温泉に入った。

……ダメだ……。

自分が情けない。


せっかく佐那子が、歩み寄ってくれたのに……台無しにしてしまった……。


くそっ。


要人は子供のようにバシャバシャとお湯を波立てたが、憂さは晴れなかった。

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