いつも、雨
子供たちすら、もはや要人に家庭人としての期待はしていない。


だが、その日を堺に、夫婦間の空気が少しだけ変わった。

これまでのようには、クールになりきれない。

何とも言えない微妙な関係になってしまった。

お互いに、歩み寄りたいのは確かなのだが……何もかもリセットしてやり直せるほど素直にはなれなかった。




ただ、佐那子は要人にスープやおにぎりを渡すことが増えた。

そして、要人は深夜に帰宅することが少しだけ増えた。


佐那子の眠るベッドに滑り込む。

まるで悪夢を見た子供が母親に甘えるように……要人は佐那子の柔らかい身体に甘えた。



……佐那子は……寝たふりをして、つかの間の幸せを享受した。




素直になりきれないこじれた夫婦にとっては、形容しがたいが、かけがえのない時間であることは確かだった。





< 403 / 666 >

この作品をシェア

pagetop