いつも、雨
最愛のヒトを突然見失ってしまうなんて……想像するだけでもお気の毒過ぎる。


「意地悪ね……竹原。」


ついそう責めると、要人はふんと鼻で笑った。


「彼女の気持ちを尊重しました。男として、彼女が頼れない息子に肩入れしても仕方ないでしょう。……まあ、本当に彼女が大事なら、自分で何とかすればいい。別に私は邪魔も反対もしませんから。」

「そんな……。実の息子さんなんですから、むしろ手を貸してさしあげるべきは義人さんのほうでしょうに……。竹原、いつも、義人さんには厳しいのね。……お気の毒だわ……。」




領子が自分ではなく、息子の義人に同情することに、要人はだんだん苛立ちを感じ始めた。


「……では、仮に義人の胤を孕んだのが、夏子さんではなく、百合子さまなら、どうでしたか？……それでも、領子さまは、同じことを言えますか？」


領子は目を見開いて、まじまじと要人を見た。

「そんな……ありもしないたとえ話なんて、意味がありませんわ。」

「いや。２人が未だに、こっそりと関係を継続していることは間違いない。……さすがに避妊は徹底しているはずだが……」

「やめてくださいっ！」

たまらず、領子は遮った。


そんなこと、考えたくない。

たとえ事実だとしても、知りたくない。

義人も百合子も、要人の血を引く兄妹なのに……。



顔色を失った領子が愛しくて……要人はさらに追いつめたい衝動に駆られてしまった。

「親孝行な子供たちじゃありませんか。かつて領子さまが望んだように、我々の代わりに結婚も可能なんですよ。戸籍上は何の問題もありませんから。」

「竹原！」

領子は要人を睨み付け……それから、ぽろぽろと涙をこぼした。


それで、やっと要人の心が晴れた。


要人は領子の髪を撫で、額や頬にキスを繰り返しながらささやいた。

「……全て、因果応報です。２人がどうあろうとも、私は反対するつもりはありません。百合子さまが望まれるなら……それを領子さまが許されるなら、私は支援します。……まあ、でも、そうはなりませんよ。大丈夫。泣かないでください。」


「竹原が泣かせたんじゃありませんか。……ひどいわ。」


領子の言う通りだ。


要人は苦笑して、領子を強く抱きしめた。
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