いつも、雨
「そうでしたか?失礼いたしました。……でも、よかった。妊娠したのが、まだ中学生の百合子さまではなく、ちゃんと大人の女性の夏子さんで。」

鼻歌でも歌い出しそうに上機嫌な要人が、領子には不思議だった。


孫って、そんなにかわいいのかしら。

それとも……竹原は、その夏子さんという女性を、百合子の身代わりとでも思っているのかしら……。


わたくしにはよくわからないけれど……百合子がどれだけ義人さんを想っても……2人はそぐわないわ。

お互いに自然体ではいられないでしょうに……。



いつの間にか、要人のペースで着物を剥がれ、悦楽の火種を煽られながら……領子はぼんやりと考えていた。


わたくしたちは、どうなのかしら……。

どれだけ一夫さんを夫として敬愛していても……こうして、竹原に触れられると喜びにうち震えてしまう。

四半世紀たっても、飽きもせず……溺れてしまう……。



「ねえ、竹原。もし……よ。もし、万が一、お互いの配偶者が先に亡くなってしまったら……何の障害もなく、誰を傷つけることもなくなれば、わたくしたち再婚も可能なんでしょうけれど……もしその時に、百合子と義人さんが結婚していたら……わたくしたち、どうなるの?」


領子の例え話を、要人は失笑した。


「先ほどの領子さまのお言葉をそっくりそのままお返しいたしましょうか。そんなありもしないたとえ話、意味がありませんよ。……あなたが私と再婚したいなら、そう命じてくださるだけでいい。どんな手を使っても、ただちに、やり遂げてみせますよ。」



百合子は、慌ててぶるぶると首を横に振った。



危ないわ……竹原。

本気で、一夫さんを排除してしまいかねないわ。

怖い……。




要人は苦笑した。

「残念。本気なのに。また振られましたか。」

「やめて。怖いから。……もう。」


子供のようにぷくっと頬を膨らませた領子がかわいくて……要人は食べつくしてしまう勢いで、領子をむさぼった。


孫も、息子も、どうでもいいとばかりに……領子の身体に溺れた。

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