いつも、雨
降り出した雨を避けるように、車はホテルの車寄せへと誘導され、停車した。


「……今度は、本降りなのかしら。」

領子の言葉を遮るように、雷がゴロゴロと鳴った。


「本格的に、来そうですね。……一夫さんには、雨で帰れなかったとでも言えばいい。……さあ。」


要人は領子の手を取って、ホテルへといざなった。



いつもなら、時間差をつけて、別々に歩くのに……。


顔の広い要人は、すぐに知人と遭遇する。


その都度、軽い会釈や、簡単な言葉でやり過ごすものの、領子の手は放そうとしない。



「……さすがに、ここは……目立ってよ?」


小声でそう注意しても、要人は笑顔で言った。


「ええ。そうですね。……今頃、一夫さんか、うちの愚息に、誰かがおせっかいな注進をしてるかもしれませんね。」



……開き直ってるの?

外堀を埋めて、わたくしに離婚を決意させるつもりなのかしら……。


……たぶん、そうね。


姑息だわ、竹原。


……でも……好きにすればいいわ。


離婚も、再婚も、わたくしの心次第。


わたくし、そう簡単には、曲げませんからね。




領子は、要人をじっと見て、それから、花のような笑顔を作った。
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