いつも、雨
まあ、少なくとも領子が18歳になるまでは、駆け落ちは控えないと、要人か犯罪者になってしまうのだが……それすら、別にかまわない。

領子が望むなら、何とかしてやる。


本心からそう思ってはいたが……同時に、領子にそんな覚悟がないこともわかっていた。


……いや……。

そこまでの覚悟を求めるのは酷だろう。


領子はまだ中学一年生になったばかり。

初恋の要人への想いを、いかんともしがたいままに、何年もこじらせ続けて……やっと初めて言葉で表現したところだ。


淡い憧れを、軽いキスで美しい思い出に昇華させてやればいい……。

その程度で充分なはずだ。


頭では、わかっている。

わかってはいても……できなかった……。



要人自身が、領子に執着しているから。



本当は、領子を他の男に渡したくはない。

昔は封印していた黒い感情は、日増しに強くなる。

領子が要人を想う純粋な恋心を養分に、要人の中の邪な悪魔が大きく育ち続けている。


言葉使いを御することなどたやすいが、衝動的な欲望は、ともすれば歯止めが効かなくなるだろう。

領子の言葉が、ボディタッチが、要人をどれだけ煽るか……そろそろ自覚すべきだ。

手遅れになる前に。



同じ次元に領子を引きずり込んで、どうなるというものでもない。

冷静に、理性的に、わきまえなければいけない。




そんな要人の頑なさが、領子にはわからなかった。


こんなに好きなのに、お兄ちゃんもわたくしを好きって言ってくれてるのに……どうして、うれしくないのかしら。

どうして、こんなにも距離を感じるのかしら。

手を伸ばせば、その熱を感じられるのに。


……好きって、むずかしい。

わたくし……好きになっては、いけなかったのかしら。

わからない。

……わからない。



領子は、ただただ困惑していた。

要人が提示した選択肢にまで考えが及ばない。


好き、で全てが完結するはずだった。

好き、とさえ伝えれば……好き、という想いさえわかりあえたなら、それでいいはずだった。

なのに、好き、だけじゃ、何の解決にもならないの?

いったい……私は……何をどうすればいいの?
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