いつも、雨
領子の言葉が変化した。
……なるほど。
耳を澄ませば、廊下にかすかな足音が近づいてくる。
要人もまた、丁寧な言葉で説明を心がけていると、
「……領子さん。少し休憩なさってはいかがですか?」
と、襖戸の向こうから声が聞こえてきた。
キタさんではなく、天花寺夫人自ら、様子を見に来たらしい。
……こわっ。
ひやりとしたものを感じつつ、要人も領子も、何事もなかったかのように取り繕った。
領子の母親は、しばらく観て、2人の演出する距離感に納得したらしい。
「初日から根(こん)を詰められますと、続きませんよ。ほどほどになさい。」
と、言い置いて、要人の部屋から出て行った。
足音が遠ざかるのを待って、2人は顔を見合わせた。
「……こんな感じで、よろしかったかしら?」
「ええ。その調子でお願いします。」
見つめ合って、ほほ笑み合う。
それだけで、心が満たされる。
今までとは違う……。
心が通い合うって、こういうことなのかしら。
天にも昇らん心地で、領子は要人に手を伸ばす。
……ただ、触れていたくて……。
要人もまた、これまでだって、差し出された手を、振りほどくことはできなかった……。
でも、今は……。
要人は領子の手を、両手で押しいただくように恭しく捉えると、唇をそっと這わせた。
キスというよりは、唇で撫でられているような……くすぐったくて、領子はゾクゾクッとした。
……なんか……やらしい……。
頬を染めて身体をモゾモゾさせる領子に、要人はほほ笑んだ。
「……そんな風に『竹原』って呼んで、他のヒトらにバレへんように頑張ってくれたら、たぶんずっと一緒にいられるんちゃうか?……領子さまが望む限り……」
領子が京都人なら、勘ぐって、多少の不安を感じたかもしれない。
でも領子は、前向きにしか捉えなかった。
「では、一生!……愛してくださいね。……竹原!♪」
弾むようにそう呼びかけた領子が愛らしくて……ただただ愛しくて……
言われなくても、この想いが消えるとは思えない。
領子が、橘の千歳さまと結婚しても……たぶん、ずっと……
要人は、ただ、ほほ笑んで、うなずいた。
何もかも飲み込んだ。
……なるほど。
耳を澄ませば、廊下にかすかな足音が近づいてくる。
要人もまた、丁寧な言葉で説明を心がけていると、
「……領子さん。少し休憩なさってはいかがですか?」
と、襖戸の向こうから声が聞こえてきた。
キタさんではなく、天花寺夫人自ら、様子を見に来たらしい。
……こわっ。
ひやりとしたものを感じつつ、要人も領子も、何事もなかったかのように取り繕った。
領子の母親は、しばらく観て、2人の演出する距離感に納得したらしい。
「初日から根(こん)を詰められますと、続きませんよ。ほどほどになさい。」
と、言い置いて、要人の部屋から出て行った。
足音が遠ざかるのを待って、2人は顔を見合わせた。
「……こんな感じで、よろしかったかしら?」
「ええ。その調子でお願いします。」
見つめ合って、ほほ笑み合う。
それだけで、心が満たされる。
今までとは違う……。
心が通い合うって、こういうことなのかしら。
天にも昇らん心地で、領子は要人に手を伸ばす。
……ただ、触れていたくて……。
要人もまた、これまでだって、差し出された手を、振りほどくことはできなかった……。
でも、今は……。
要人は領子の手を、両手で押しいただくように恭しく捉えると、唇をそっと這わせた。
キスというよりは、唇で撫でられているような……くすぐったくて、領子はゾクゾクッとした。
……なんか……やらしい……。
頬を染めて身体をモゾモゾさせる領子に、要人はほほ笑んだ。
「……そんな風に『竹原』って呼んで、他のヒトらにバレへんように頑張ってくれたら、たぶんずっと一緒にいられるんちゃうか?……領子さまが望む限り……」
領子が京都人なら、勘ぐって、多少の不安を感じたかもしれない。
でも領子は、前向きにしか捉えなかった。
「では、一生!……愛してくださいね。……竹原!♪」
弾むようにそう呼びかけた領子が愛らしくて……ただただ愛しくて……
言われなくても、この想いが消えるとは思えない。
領子が、橘の千歳さまと結婚しても……たぶん、ずっと……
要人は、ただ、ほほ笑んで、うなずいた。
何もかも飲み込んだ。