いつも、雨
……ハッキリと決められたわけではないが、暗黙の了解で、領子との結納は千歳が大学に合格してから、ということになっているらしい。


考えると、ため息が出てくる。


あと3年……。

3年後に、わたくしは……どうすればいいのかしら。

竹原と離れることは、考えられない。

以前、竹原が言っていた通り、駆け落ちしてしまうしかないのかしら。



どれだけ要人が優秀でも、領子の両親が2人の結婚を認めることはあり得ない。

恋に夢中で頭に花が咲いている状態の領子でも、それぐらいはわかる。



……。

よしましょう。

今、考えることじゃないわ。

そんなことより、今度こそ……竹原と……。


領子は想像して、頬を染めた。


既に、兄の恭風の住む京都の天花寺邸へ送った荷物の中には……とっておきの下着セットを入れておいた。

クラスメートのアドバイスで、ムダ毛の処理もした。


……避妊具は……やめた。


心のどこかで、領子は望んでいる。

要人の子供をみごもることを。


さすがに初めての行為で、そんなの、無理よね……。

でも、わたくし、生理は狂いがちだし……もしかしたら……。

ドキドキ……わくわく……。


領子は、新幹線のグリーン席で1人でジタバタともだえた。





京都駅には、兄の恭風が迎えに来てくれていた。

「お兄さま。……なんだか……ふくよかになられました?」

思わず言葉を選んだ。


恭風はデブの1歩手前というところまで恰幅がよくなっていた。

もともと白いもち肌なのだが、本当にお餅のようだ。


「そうかもしれへんなあ。多少、不摂生してるしなあ。」

恭風は、すっかり板に付いた京言葉でそう言った。


今では、京都人の要人よりも、じゃらじゃらした京言葉で話している。
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