サクラチル
奏の病室からの帰り道。



久しぶりに見る彼を思い出す。



それはかつてのライバルでもなくただの病人だった。



目に焼き付いていた彼の姿を消し



琴音を探しに行こうと足を進めれば雨が降り続く中庭に人影があった。



気になって寄ってみるとベンチで静かに涙を流す琴音がいた。



彼女はまだ気付いてない。



ただぼっと一点を見つめる彼女の方へ傘を向ける。
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