君の声が、僕を呼ぶまで
それでも、何度か、彼女を目にする機会はあった。

護衛の目を盗んで姫に近付く事が出来た、敵国の王子のような気持ち。


僕に、そんな立派な肩書きの役は務まらないけれど、彼女のそれは、まるで神様があらかじめ配役していたかのように、ピッタリだと思った。


あの日と同じ、どこか儚く憂いた表情。

やっぱり、その視線が誰かと、僕と交わる事はない。


けれど、だからこそ、気付いてしまった。
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