君の声が、僕を呼ぶまで
本当は、ちょっと違う。

正しくは、私の心の中の言葉を、声を、聴き取る事が出来るのは、サラだけ。



お母さんが、本当に挨拶を返して欲しかったり、喋りたいのは、私と、だ。

お父さんが、本当に聞いてみたいのは、私が、どんな話をしているか、だ。


「…小春…」

サラが、私の顔を見て、申し訳なさそうな顔をする。

「ううん、気にしないで。何でも話してって、何でも聞くよって約束だから」


サラとそう話している間も、お父さんとお母さんは、いつも通り、朝食を食べて新聞を読んでいる。


サラが「ニャー」と鳴いて、私がサラの方を見つめている。

きっと、そんなふうに見えているんだろう。

実際、そうなんだ。


私の声は…人間の耳で聴き取れるはずの声は……
< 119 / 389 >

この作品をシェア

pagetop