君の声が、僕を呼ぶまで
「はぁい、今日も元気にいってらっしゃい」

お母さんが玄関でエールを送る。

「ほら、サラも」

いつものように、サラを私の顔へと近付けて、いってらっしゃいのチュウを促した。


「…小春」

サラは、やっぱり言わなきゃよかった、という顔をまだ続けている。

「あら、サラ、どうしたの?」

いくら言葉が通じないとはいえ、動物にだって見て取れるほどの感情の動きはある。

それが、自分の家にいる子の事なら、尚のこと、分かりやすい。

だから、お母さんも、サラがしょんぼりしている事に気付く。


「ケンカでもしたの?」

ふるふると首を振って下を向いている私の頭を、お母さんは優しく撫でた。


「小春、サラは大事なお友達なんでしょう?」

優しい声で言う。
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