君の声が、僕を呼ぶまで
その手と声の優しさに、たまらない感情が込み上げてきて、私は思わず顔を上げた。

…けど。


「…っ」


声が出ない。

伝えたい言葉は、ここにあるのに。

また私は下を向く。



「うん、うん、焦らなくて大丈夫よ。でも今日は、いつもより少し頑張ってくれたのね。お母さん、すごく嬉しいわ」

ふわりと抱きしめられる。


「サラが応援してくれてるのね」

私はお母さんの腕の中で、小さく頷いた。


ストンと降りたサラは、私の足に寄り添い、尻尾を巻き付けている。


「ありがとう」と小さな声でお礼を言うと、ようやく、サラの顔に明るさが戻った。
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