君の声が、僕を呼ぶまで
「陽太先輩って、とっつきやすくていいよね」

「そうかな…」

「あれ、桜子は、陽太先輩の事、苦手なの?」


しまった。

沙羅があまりにも自然に隣に来ていたから油断した。

今度こそ、心の中の呟きが口から漏れてしまった…。


「あ、いや、そんなに仲良くないし、よく知らないから…かな」

「そぉ?結構、先輩と喋ってると思ったんだけどなぁ」


慌てて取り繕うように、沙羅に弁明したけれど。


楽しそうにしてる冬島先輩は、確かにとっつきにくくはない。

むしろ、先輩風を存分に吹かせて偉そうにはしないし、私達後輩を可愛がってくれる。

明るく、気さくな人。


…だから、この苛立ちは誰にも知られてはいけない。
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