君の声が、僕を呼ぶまで
私は高校の入学式にも出席しなかった。

けれど、入学式の数日前が、実質、私の入学式だった。


「カウンセラーの先生って、優しいとは思うけど、あれこれ聞いてくるんじゃないかなぁ」

私は、期待とは裏腹に徐々に高まっていく不安について、何度もサラに話を聞いて貰った。


サラは「僕は猫だから、人間社会の制度に詳しいわけないじゃないか」なんて言いながらも、最後まで聞いてくれる。


雪人先生との初めての顔合わせの日。

その日も、お母さんに着いてきて貰って、保健室へ向かう。


新しい制服は、何だか、照れくさい。

だけどもう、あの黒々しく、いろんなモノが滲み込んだ中学の制服は着なくていい。

新しい校舎には、私をズタボロに傷付けるモノは、少なくとも今はまだないはずだ。


それでも、怖い。

人というものが怖い。

私は文字通り、声にならない声で「怖い」と叫び続けた。
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