君の声が、僕を呼ぶまで
思考を巡らせながら、何となしにポケットに手を入れると、黒ネコ柄の絆創膏が1枚入っていた。


その黒猫がサラに似てるからって、お母さんが買ってくれたものだ。

「小春が、どこも痛い想いをしないように、お守り」

そう言って持たせてくれた。


20枚1パックだったから、まだ家にお守りの蓄えは残っている。

「このお守り、あなたにも効くかな…」


その時、強い風が、ゆらゆらと舞っていた桜の花びらを巻き上げた。

淡くて、濃い、薄紅色の空が広がる。


長く長く感じられたその一瞬を、ゆるやかに全身で感じていた、その次の瞬間。

「あの…」


これは、雛鳥の、声じゃ、ない。

これは、人の、怖い人間の、声。


冷たい汗が、体の奥を伝うのを感じる。

暖かな春の風が、私の体温を奪う。
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