君の声が、僕を呼ぶまで
その声の主の男の子は、あぁでもないこうでもないと何か呟いていたようだけれど、私は顔を背けたまま、一歩ずつ距離を取った。

あ、でも雛鳥…


「とりあえず、保健室で消毒して貰うってのは、どうかな…?」

その男の子は、私が怪我をした雛鳥を気にしている事に気付いてくれたようだ。


でも、だからといって、先生に対してと同じく、そんな簡単に気を許せるものじゃない。


その案を聞いた私は、少しだけ考え込んでいた。

「痛いよね?」

雛鳥に話しかけると、弱々しい返事が返ってきた。


また思考を巡らせてみたけれど、それが最善の方法だろうと思った。

というか、ここで私一人で出来る事は限られていて、最善というよりは、他に選択肢がなかった。


…仕方ない。
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