君の声が、僕を呼ぶまで
保健室の窓ガラスを、外側からコンコンとノックした。

準備が終わって戻ってきていた塚原先生が、窓を開けて顔を出す。


「どうしたの? 小春ちゃ…相川さん」


あれ、小春ちゃんって、そう呼んでたっけ?


初めて会ってからというもの、先生が話す事もほとんどなかったので、その響きがやたら耳に残った。


言い直したのは彼…他の生徒がいたからだろうと、後から思った。


何にせよ、頼るしかない。

私は、黙ったまま、雛鳥の方を指差す。


「あぁ、なるほどね…。連れておいで、消毒してあげるから」

保健医は、動物のお医者さんもしてくれるんだ…。

それが一般的かどうかは分からないけれど、私はボンヤリそう思った。


ふと気付くと、男の子がハンカチを差し出している。

雛鳥の血がどうとか、彼も先生も言っているような気がしたけれど、私にとって、それは大した問題ではなかった。
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