君の声が、僕を呼ぶまで
こう言ったら何だけど、小春よりも私の方が体力があるのは明らかだったわけで。

すぐに追いついた。

けれど、やっぱり遅かった。


「小春…」

私が差し伸べた手を、力の限り払い除けて、数歩下がる。

顔を下に向けたまま震えて、泣いているのかなと思った。


でも、きっと、泣いてなかった。

涙なんかでは溢れ出せない、それは、絶望。

心の奥深くに押しとどめて、どんどん沈めていく、恐怖。

潰されてしまいそうな、小さな小さな小春。


「とりあえず、帰ろ? 私、送るから」

小春は力強く首を振る。

…あ、小春のカバン、多分保健室だ

取りに戻ろうか、でも小春をこのままにしては…
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