君の声が、僕を呼ぶまで

●智秋と、春桜色の子

1年前。

高校の入学式。


周りの人達の軽やかな足取りに比べて、僕の足取りは、鉄の足枷を引きずっているかのように重たいものだった。


”期待と不安に満ちた高校生活のスタート”


そんな、青春の素晴らしさへの憧れを煽る決まり文句が、頭の中で、煩わしくループする。


如何にも、『期待5:不安5半々でしょう?』なんてでも言いたげだ。


もしくは期待が不安を大きく上回るという、新生活へのモチベーションを上げる為のキャッチフレーズ。

…『みんな、期待7:不安3って感じなんだよ』みたいな。


それは既に、憶測でなく押し付けだ。

その割合なんて人それぞれに決まっている。

いっそ統計を取ってみればいい。


きっと、僕の場合、期待2:不安8くらいだっただろう。
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