君の声が、僕を呼ぶまで
…ごめんね、小春…

「僕のせいで」

「…ううん、サラのせいじゃ、ないよ」


僕の言葉が初めて通じて、小春の心の声が初めて聞こえた。

僕の言葉は、小春にだけ通じる。

小春の声は、僕にだけ聞こえる。


僕と話すようになって、少しずつ小春の顔に明るさは戻っていった。

「小春とサラは、まるでお話をしているみたいね」

お母さんが笑いながら言うと、小春は強く頷いた。


「サラ、小春といっぱいお話ししてあげてね」

「ニャー」

僕も、力強く頷いた。

「そういえば、サラの名前だけど、“サラブレッド”じゃなくて、こういうのはどうかしら?」



僕に、暖かい場所と、名前と、家族をくれた小春。

だから、小春にも、暖かい世界を思い出して欲しい。

お母さんも、お父さんも、僕も、小春に望んでいる事は、同じなんだ。


そして、きっと、この桜子という子も。
< 232 / 389 >

この作品をシェア

pagetop