君の声が、僕を呼ぶまで
一枚一枚、チョークで丁寧に解説が書かれていた。


『智秋ちゃん、スカートを嫌がるお年頃』

普通にズボン履いてるだけじゃないか…。

『男子に囲まれてハーレムでお弁当食べてご満悦』

遠足で、クラスの男の子達とお弁当食べてただけなのに。

『夏野の足をいやらしい目で見てる!!』

運動会の時、沙羅と一緒に写った写真だ。


これは一際目立つようにされてて。

遅れて教室に入って来た沙羅の目に一番に留まったのも仕方ないと思う。

「…っ!」

一直線に、その写真を剥がして、ギュっと握りしめる。


「沙羅…」

僕は震えている沙羅に手を伸ばした。

「…やだ!」

沙羅はこっちを見る事すらせず、僕の手を振り払った。


「男子やめなよー、沙羅は関係ないじゃん」

クラスの女子達が、沙羅の傍に寄ってきて、慰めるように言う。


…沙羅にまで、無視された。

拒絶された。


「ほんっと、お前って気持ち悪いなぁ」


満足そうにいう声が聞こえた。

それは大樹の声に似ているような気がした。
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