君の声が、僕を呼ぶまで
「夏野、俺、お前の事が好きだ」

沙羅と…大樹だ。

「私、あなたの事、好きじゃない」

「え…」

「智秋を苛めてたの、あなたでしょ?」

沙羅が、凛とした声で、躊躇いなく大樹に言った。


「なっ…」

「あなたが周りの男子に、『智秋、苛めね?』って言ってたの、私、知ってるもの」

「だって、それは夏野がアイツの事を…」

「…私、あなたの事、嫌い」

「ふっ…ざけるなっ」


怒りに身を任せて、大樹が拳を振り上げる。

「キャッ…」

沙羅が身構える。

僕の身体は、反射的に、沙羅を庇っていた。


ガッ…


「…つぅ…」

「智秋…?」

大樹は、自分の拳を見つめて、唖然としている。

僕にはよく分からないけど、やっぱり、人を直接殴った感触は、重たく感じるんだろうな。


「智秋、大丈夫!?」

沙羅が驚いて、僕に寄り添うようにかがむ。

唇の端が切れて、血が出ているようだ。
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